新型コロナウイルスの感染拡大により、企業の経営状況の悪化や倒産が問題になっています。
テレビや新聞、雑誌などでは、連日のように新型コロナの経済や経営への影響を報じている状況です。ニュースを見聞きし、我がことのように感じている経営者も多いことでしょう。
企業においては人手不足が嘆かれていましたが、新型コロナの影響で企業の人手不足感も解消されたというニュースが出ています。病気の蔓延で人手不足が解消されたという皮肉な結果です。
新型コロナによる倒産も多数出ています。日本企業への新型コロナウイルスの影響は、経営状況・雇用ともに大きなものとなりました。
今回の記事では、新型コロナウイルスによる企業の倒産を取り上げます。ニュースや倒産件数をご紹介し、倒産を検討している会社経営者の対処法についても検討します。
新型コロナ関連の倒産件数の推移
新型コロナウイルスの影響により、企業の経営に大きな影響が出ています。
新型コロナの感染拡大を防ぐために外出自粛。会社の休業や時短営業。さらに、感染拡大を受けた外出を控えた客層が買い控えなどを行ったため、いくつもの業種に影響が出ることになりました。
新型コロナウイルスの影響で倒産した会社は、帝国データバンクによると「全国で192件(2020年5月28日16時時点)」となっています。うち、法的整理に入っているのは126件。事業停止は66件です。
新型コロナによる倒産は全国39都道府県で起きています。最も倒産件数が多いのは東京で、件数は41件です。次の多かったのは、新型コロナの感染拡大が早かった北海道の17件。その次が大都市で企業活動も活発な大阪で、13件となっています。以下、兵庫、静岡などが続きます。
地方ごとの倒産発生件数などは、帝国データバンクのサイトで確認可能です。
新型コロナでは「隠れ倒産」も出ている
帝国データバンクの公開している倒産件数を見たときの意見は人それぞれでしょう。「意外と多い」と感じる経営者もいれば、「想像していたより少ない」と感じる経営者もいるかもしれません。
実は、新型コロナでは倒産件数に現れていない「隠れ倒産」が多いと指摘されています。帝国データバンクなどが公開している数字より、新型コロナ感染拡大のダメージを受けて企業活動ができなくなっている「隠れ倒産会社」はより多いのではないかといわれているのです。
隠れ倒産とは、実際の倒産件数に含まれない廃業などを指します。事業継続が本当に困難になって倒産するのではなく、新型コロナの影響や今後の経営も含めて検討し、会社に深刻なダメージを受ける前に会社をたたんでしまうのです。
隠れ倒産は実際の数字には出難いため、テレビや新聞、調査機関などが公開している数字より「会社を終わらせよう」と決断する経営者は多いのではないかといわれています。
新型コロナで倒産の多い業種
新型コロナウイルス関連倒産で最も多い業種は「ホテル・旅館」になっています。帝国データバンクの2020年5月28日16時時点の資料によると、新型コロナ関連倒産192件のうち38件が旅館やホテルです。
次に新型コロナ関連倒産が多い業種は飲食店の23件。その次がアパレルの15件。以下、食品製造14件、食品卸11件と続きます。
新型コロナの影響で外出を自粛する。人によっては収入が下がる。会社などの出張命令を取り消す。すると、出張や旅行で使われるホテルや旅館が影響を受けます。外出自粛により外食も控えますから、当然ですが飲食店も儲けが激減します。
飲食店やホテル、旅館などに食品を製造していた会社や卸していた会社も「人が来ないから食品の仕入れを減らす」などの事情から影響を受けることになります。関連のある業界が連鎖反応のように新型コロナ関連踏査していることがわかるのではないでしょうか。
ご紹介した数字は、あくまで倒産件数です。隠れ倒産や倒産を検討している件数は含まれていません。また、一時的に飲食店を閉めているなどの数字も反映されていません。
道を歩いていると、店先に時短営業や暫く営業を自粛する旨の張り紙をした飲食店を見かけませんか。そのようなお店も倒産の危機を迎えたり、経営に打撃を受けたりしています。しかし、この倒産件数のデータには含まれていないということです。
新型コロナは今後さらに影響を与えるか?
新型コロナウイルスによる自粛は、徐々に弱められています。政府は5月25日に非常事態宣言の終了を発表し、新型コロナによる自粛を段階的に緩める方向性を示しました。6月19日からは県境をまたぐ移動の自粛も解除される予定です。
ただし、自粛が緩められたからといって、すぐに会社の経営状況が上向くわけではありません。依然として新型コロナウイルスのニュースは世間を騒がせているため、慎重派の人は外出を控えていることも少なくありません。また、会社の景気が悪いということは、一般の人たちの懐状況も悪くなるということです。自粛が緩められても、財布の紐を固くして、旅行や飲食などを控えるかもしれません。
さらに、いろいろな業界にすでにマイナスが出ているわけですから、このマイナスをどうするかが問題です。自粛が緩められてお客さんが来るようになっても、すでに出ているマイナスを回復するくらいの収益を上げることは、すぐには難しいのではないでしょうか。
また、隠れ倒産状態の会社も存在していることはすでにお伝えしました。現在、倒産を検討している会社や、倒産しそうで耐えている会社もあるわけです。このような会社が、今後、本格的な倒産をしてしまうことも考えられます。
日本以外の国の新型コロナウイルスの影響も気になります。
たとえばアメリカ。アメリカは日本のトップ3に入る貿易相手国です。アメリカでは、新型コロナの感染者数が10万人を超えたという発表がありました。貿易相手国は経済的に密接に結びついているため、相手国の状況が日本に影響を与える可能性は高いといえます。
・他の国々の経済状況が日本に影響する
・自粛が解除されても会社がすぐに大きな利益を上げることは難しい
・隠れ倒産状態は依然として存在している
・倒産を検討している会社や耐えている会社が今後倒産する可能性がある
以上のような理由から、新型コロナウイルスの影響は暫くの間出ると予想します。
中小企業の資金繰りの状況は?
中小企業の資金繰りが厳しい状況であることも報じられています。資金繰りが厳しければ金融機関などから融資を受ければいいと考えるかもしれません。
しかし、融資は返済できる見込みがあってこそ。新規事業を行う。事業を拡大する。新店舗を開店する。新型コロナによる資金繰りのお悩みは、このような会社を大きくするための融資ではありません。新型コロナのせいで会社の経営に困ったからこその融資です。
先の見えない状況では返済の見通しも難しく、融資を受けることにためらいを覚える中小企業は少なくありません。また、融資自体を申し込んでも、経営状況の悪化から融資自体を断られるケースもあります。中小企業の資金繰りは厳しい状況です。
新型コロナ倒産の対処法は?
新型コロナ倒産を防ぐためには、経営者はどのような対処法を講じたらいいのでしょうか。
新型コロナ倒産の対処法は3つ考えられます。
1.事業や返済の見直し
2.制度の有効活用
3.早めの相談を行う
会社経営者が検討したい3つの方法を見て行きましょう。
会社の事業や返済状況について見直ししてみる
新型コロナで経営状況が悪化したら「経営が苦しい」で思考を止めず、事業や返済状況などを見直しすることが重要です。
家計が支出に圧迫されたら、無駄な支出がないか見直しします。それと同じです。経営状況が良好だったときには見えなかった無駄が見つかるかもしれません。会社も同じです。苦しいときこと、収支を改めて見直ししてみましょう。
返済が経営状況を圧迫しているなら、リスケジュールなどの対策を検討することも重要です。
返済が苦しい場合は、弁護士や金融機関などに相談してみましょう。今回の新型コロナウイルスによる経営悪化は全国規模ですから、返済についての交渉などもより行いやすいはずです。
制度を有効活用する
政府は中小企業支援のために数々の制作を打ち出しています。政策の中で自社が使えそうなものがあれば、積極的に活用しましょう。
経営が悪化したからといって即座に倒産を検討する必要はありません。使えそうな制度は使い、会社の存続に役立ててください。
現在はいくつもの制度があるため、どの制度が自社に向くか、また、使えるかどうかを判断することが難しい状況です。制度の利用には書類の提出なども必要なので、手続きに難しさを覚える経営者もいることでしょう。
手続きが難しい場合は管轄の窓口や弁護士などの専門家に相談してください。弁護士や税理士などに相談した場合は、経営や会社立て直しのアドバイスも一緒に受けられるはずです。
制度の利用に際しては早めの相談を心がける
制度利用の際に相談する場合は、窓口の混雑状況に注意する必要があります。新型コロナによる経営状況悪化により、多くの会社経営者が担当窓口や専門家に相談している状況です。
窓口によってはかなり混雑しており、制度利用のための手続きも順番待ちです。
制度については書類を提出して即座に受理されず、差し戻しなどが発生することもあります。差し戻しなどが発生すると、制度の利用が遅れてしまうのです。
経営状況がひっ迫し、すぐに支援してもらわないと倒産してしまう。このような状況になってやっと相談や手続きを行ったのでは、手遅れになる可能性もあります。制度の利用に際しては、早めの相談と準備をおすすめします。
最後に
新型コロナウイルスの感染拡大により倒産が急増しています。今後も新型コロナの影響は続き、倒産する会社や経営状況が悪化する会社が出てくることでしょう。
新型コロナによる倒産を防止するためには、早めの相談や制度の利用などが重要です。倒産対策のために、早めに動き出しましょう。