中小企業の資金調達方法とは?メリットやデメリット、難しい理由を解説

国内にある企業数のうち、大半を占めるのは中小企業ですが、銀行から融資を貸し渋りされる場合も少なくありません。
一般的にお金を得たい場合には銀行融資を初めに検討するケースが多いでしょうが、中小企業が活用できる資金調達方法は多く存在します。
事業拡大時や資金繰りが苦しい場合、開業時に役立つ資金調達方法を知っておくことは非常に大切です。
この記事では、中小企業の代表的な資金調達方法や、活用するメリット・デメリット、資金調達が難しいと言われる理由を解説します。

中小企業の資金調達方法9選

  1. 中小企業
  2. 資金調達
  3. メリット
  4. デメリット
  5. 銀行融資
  6. 信用金庫
  7. 信用組合
  8. 日本政策金融公庫
  9. 助成金・補助金
  10. ビジネスローン
  11. M&A
  12. 株式発行
  13. ファクタリング

銀行

銀行融資は、事業拡大や継続のための資金調達として検討したい資金調達方法になります。
銀行の種類は、メガバンク・地方銀行・信託銀行・ネット銀行の大きく4つです。
銀行融資には、決算書や事業計画書など「事業の健全性」を示すために複数の審査資料が求められます。
そのため、申込から資金調達までに1週間から1ヶ月と時間がかかる傾向がありますが、他の資金調達方法より高額かつ低金利で調達できるメリットがあります。
なお、メガバンクは大企業を中心に取引しているため、業績が低かったり、事業規模が小さかったりする中小企業だと融資を受けられない場合もあるかもしれません。
一方で、地方銀行や信託銀行、ネット銀行では大企業だけでなく中小企業も融資を受けられる可能性が高いといえます。

信用金庫

信用金庫は、地域の相互扶助を目的とする地域密着型の非営利の金融機関になります。
地域社会貢献に寄与する個人事業主や中小企業も融資を受けられやすい点が特徴です。

基本的に融資は会員を対象としていますが、700万円以内の小口融資などは会員以外でも利用できます。
中小企業が会員になるには、従業員300人以下もしくは資本金9億円以下で、信用金庫の営業エリアに立地している企業であることが条件です。
また、利用する信用金庫が定めている出資金(5,000円程度)の支払いも必要です。 地域が限定されているため対面営業などコミュニケーション力に長けており、融資の相談はもちろん事業に必要な情報提供や相談に応じてくれます。
開業時や初めて融資を受ける場合、信用保証協会が保証している「保証協会付き融資」となり、貸倒リスクの低さから審査基準としては比較的利用しやすくなっています。
信用金庫の融資は、1,000万円以下が主力になっていますが、開業資金の資金調達でも利用できる点がメリットといえるでしょう。

信用組合

信用組合は、信用金庫と同じ非営利・協同組織の金融機関です。
特定の地域に居住・就労している人たちが運営している組織で、出資者を組合員と呼びます。
組合員の互助を重要視しており、信用金庫より「特定の地域」が限られている点が特徴です。
中小企業等協同組合法・協同組合による金融事業に関する法律に基づいて運営しており、融資は基本的に組合員を対象としています。
組合員になるには、下記の要件を満たす必要があります。

• 信用組合の地区内に住所または居所がある方
• 信用組合の地区内で勤めている方
• 信用組合の地区内で商業・工業・鉱業・運送業・サービス業・その他の事業を営む小規模の事業者
上記に加えて、利用する信用組合が定めている出資金(5,000円程度)の支払いも必要です。
信用金庫と同じく、信用組合も小規模な中小企業でも利用しやすい資金調達方法といえます。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、国が運営する金融機関です。
政府の政策を反映させた金融サービスを提供しており、民間金融機関からは資金調達ができない事業主や法人にも融資などを積極的に実施しています。
開業資金を調達するための新規開業資金や、取引先の倒産による経営が苦しい状況での運転資金も融資を受けられる可能性が民間の金融機関より高い点が大きな特徴です。
新事業や経営多角化などの事業拡大などを目指す新事業活動促進資金なども融資を受けられます。
民間の金融機関よりも低金利で高額の資金調達ができる点も、日本政策金融公庫の融資制度を利用する大きなメリットといえます。

助成金・補助金

助成金と補助金は、返済不要で国や地方自治体などから支給を受けられる給付金です。
助成金や補助金には支給の目的があるため、支給条件に合致することが受給には必要になります。
助成金や補助金は返済する必要がない点は大きなメリットになります。
こまめに助成金や補助金の内容を確認し、受給条件に該当できる場合には申請を検討します。
なお、利用条件が厳しめで、必要書類が多いという特徴もあります。
助成金と補助金はともに、支援内容の費用を支払った後に支払われるお金のため、ある程度の資金を用意しておかなければなりません。

ビジネスローン

ビジネスローンは、預金業務を行わない金融会社、いわゆるノンバンクからの事業融資を言います。
ノンバンクは、融資をすることで利益を得ているため、融資をすることを金融機関に比べて非常に積極的です。
そのため、開業資金の調達目的や運転資金の目的でも資金調達は可能です。
また、担保や保証人不要で申込から最短即日などのスピードの速さが特徴と言えます。
一方で、ノンバンクは調達額が少額になりやすく、金利も高い設定が一般的になるため、一時的な事業運転資金などに活用する機会が多くなります。

M&A

M&Aとは、2つ以上の企業の合併や買収を言います。
M&Aで資金調達するということは、法人や事業の全部もしくは一部を他の会社に売却することです。売却すると経営する権利が、買収した企業に移ります。
M&Aで得た資金は、融資などと異なり返済が不要です。
返済がないので、一度売却してしまった経営権も買い戻さない限り戻ってきません。
M&Aはすでに開始している事業があることが前提になるので、運転資金や事業拡大などの資金調達に活用できます。

株式発行

株式発行による出資も、中小企業の資金調達方法のひとつです。
出資は、株式会社の株式などと交換して投資家などから資金提供を受けることを言います。
出資により調達した資金は、基本的には返済が不要です。
投資家は企業価値が高くなることで、株式価値の増加や配当金から利益を得ます。
そのため、投資家から経営上のアドバイスや支援を積極的に受けられることがメリットです。
一方で、株式の保有割合によっては経営権が投資家に移ってしまう事態になりえます。
また、投資家と意見が異なる場面などでは経営の自由度が下がってしまうことも起こりえます。
一般的に、企業や事業の評価(デューディリジェント)があるため資金調達までに期間が長くなる点は覚えておきましょう。

ファクタリング

ファクタリングは、企業が持つ売掛債権をファクタリング会社に売ることで資金調達をおこなう方法です。
債権売買であるファクタリングは借入ではありません。
利息はありませんが、買取手数料が費用として発生します。
ファクタリングは、売掛先の信用力が審査に大きな影響があるため、利用者が開業してまもない事業者などでも簡単に資金調達ができる点がメリットになります。
ファクタリングの種類は大きく分けて、2社間取引と3社間取引の2つです。
2社間取引は利用者とファクタリング会社で手続きし、3社間取引は売掛先が加わります。
3社間取引は売掛先の同意が必要なため資金調達までの時間が2社間取引に比べて長いものの、買取手数料が安めに設定してあります。

中小企業が資金調達をおこなうメリット

中小企業が資金調達するメリットとしては、下記の3つがあります。

• 開業資金を確保できる
• 事業を拡大できる
• 事業を継続できる

資金調達で受けるメリットは、時期と事業状況によって異なります。
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

開業資金を確保できる

開業資金は、事業を開始するために必要となる資金です。
開業するまでには、店舗や事務所の準備/厨房機器やオフィス機器などの設備購入や人を採用する当面の資金などが含まれます。
開業する前ならびに開業してから十分な売上が確保できるまでに必要な資金が開業資金です。
開業資金は、事業の内容や規模によって必要な金額が異なってきます。
業種によって開業資金は大きく異なりますが、前もって資金を準備していない場合も少なくないでしょう。
そこで、資金調達をおこなえばこれから営みたい事業を始めることが可能です。
ただし、開業前は業績がない場合が多く、返済能力を証明できないとお金を得られない可能性があります。
開業資金を調達する際は、返済不要の資金調達方法や日本政策金融公庫の創業融資制度を活用してみてください。

事業を拡大できる

今までの事業が好調であり、売上や利益を増やすことを目的に事業拡大(成長)させるタイミングでも資金が必要です。
具体的には、事業拡大にともない支店や店舗を増やして販売範囲の拡張、販売商品や販売員などのスタッフを増やす、設備投資などによって生産性の向上なども含まれます。
事業拡大の多くの場合には先行して支払いが発生し、毎月の支出も増加します。
一方で、事業拡大による売上や収入が増えていくタイミングはそれより遅れることが一般的です。
そのため、事業を拡大させるタイミングで資金調達が必要になります。

事業を継続できる

事業を継続させるための資金を運転資金と言います。
運転資金は、日々の事業における支払いに必要な資金です。
具体的には、雇用する社員などの人件費、店舗や事務所などの家賃や光熱費、仕入れ費用や資金調達費用などが含まれます。
また、老朽化による設備の入れ替えなどの設備投資も事業を継続させるための資金に含まれる場合があります。
事業を継続させる上で、収入が支出を大きく上回る状況下では資金調達の必要性は低くなるでしょう。
一方で、支出が収入を大きく上回る状況下では、運転資金を調達する必要性が高くなります。

中小企業が資金調達をおこなうデメリット

一方で、中小企業が資金調達するデメリットとして下記もあります。

• 資金を得るまでに時間がかかる
• 返済義務が生じる場合がある
• 外部の人間から経営に対して口出しされる場合がある

いずれにおいても、資金調達の前に把握しておかなければ、資金繰りが余計に苦しくなる場合があるため理解しておきましょう。

資金を得るまでに時間がかかる

資金調達方法によっては、申込から資金調達までに1ヶ月程度かかってしまいます。
特に、銀行融資や日本政策金融公庫では融資審査に時間がかかってしまうため、早急に資金を調達しなければいけない時にはファクタリングやノンバンクの利用が適しています。
もし、早急に資金が必要な時に調達が間に合わなければ、倒産に繋がりかねません。
資金調達が必要になると判明した場合は、状況に適した資金調達方法を迅速に選別した上で、申込準備を進めるようにしましょう。
ファクタリングなら最短即日での資金調達も可能です。
どうしても早く手元にお金が欲しい場合には、ファクタリングを検討してみてください。

返済義務が生じる場合がある

助成金や補助金は返済義務が発生しませんが、銀行融資などで資金調達した場合、元金に加えて利息を返済する必要があるため、慎重に検討しなければいけません。
しかし、東京商工リサーチの2022年度調査 によると、中小企業のうち31.7%が過剰債務と実感しているのが現状です。
過剰債務によって、予定していた期間までに返済できないと利息が増えるだけでなく、信用を失って次回以降の融資を受けられなくなるリスクもあります。
資金調達先によって金利が異なるため、数社の資金調達先の返済条件を比較して、利息を最小限に抑えるのが資金繰りを悪化させないコツです。
闇雲に資金調達するのではなく、返済計画を立てた上で無理のない資金額を調達するようにしましょう。

外部の人間から経営に対して口出しされる場合がある

ベンチャーキャピタルや個人投資家などの投資によって資金調達した場合、自社の経営に介入される場合があります。
特に、出資する資金額が多い主要株主であるほど、自社に対する発言力が強くなります。
そのため、自社で資金を費やしたい事業があったとしても、主要株主に反対されると、説得するか資金用途先を変更しなければいけません。
投資で調達した資金は返済義務がありませんが、融資で調達した資金よりも自由に使いづらい点がデメリットです。

中小企業の資金調達が厳しい理由

中小企業の資金調達方法はさまざまな選択肢があるものの、大企業に比べてお金を得にくいのが現状です。
ここでは、中小企業の資金調達が厳しい理由を見ていきましょう。

業績や信用力の低さが原因

銀行や政府系金融機関の日本政策金融金庫を利用した資金調達の場合、中小企業には欠けやすい業績や信用力が審査対象です。
実際に日本政策金融金庫では審査対象項目として、これまでの業績・これからの事業見通し・業界の動向・申込計画を挙げています。
一方で、国税庁の令和2年度会社標本調査 によると、欠損法人の割合は62.3%です。
また、平成28年度に中小機構 が発表した中小企業の割合は、全企業数のうち99.7%であることから、業績や信用力に欠ける中小企業が多いのが現実です。
中小企業は業績や信用力に欠けやすいため、不動産担保による融資条件が多いものの、不動産を所有する中小企業が少ないのも、資金調達が厳しい原因といえます。

中小企業は不動産担保による融資が多い

中小企業総合研究所の2005年度調査 によると、中小企業向け貸出金担保のうち85.7%が不動産です。
しかし、国土交通省の平成15年度の調査から、有担保として利用可能な不動産を所有する法人は34.5%にとどまることが分かっています。
不動産担保が可能な中小企業が少ない問題から、平成21年度には中小企業金融円滑化法が施行され、2023年現在も金融庁が融資条件緩和に取り組んでいます。

情報開示へのためらい

ベンチャーキャピタルや個人投資家から資金調達する方法もありますが、自社の情報開示を積極的に実施しなければ出資してくれません。
出資者は、開示された情報を基に成長する見込みがある企業かどうかを判断して出資するためです。
しかし、中小企業庁が実施した中小企業経営者の意識アンケート によると、自社の情報を積極的に開示していると実感しているのは60.0%にとどまっています。
仮に自社の情報開示を実施したとしても、出資者に魅力に欠ける事業と判断されてしまった場合は資金を集められません。

中小企業が資金調達を成功させる5つのポイント

中小企業が資金調達する際に押さえておきたいポイントは以下の5つです。

• 目的と調達すべき金額を明確にする
• 自社に合った資金調達方法を選ぶ
• 事業計画書を作成し信頼を得る
• 専門家に相談する
• 継続的に利用して取引実績を作る

資金調達に関して念入りに事前準備しておくことに加えて、資金調達後も資金調達先と良好な関係を維持するのが重要です。

目的と調達すべき金額を明確にする

調達資金は短期もしくは長期のどちらで使うのかを明確にして、必要分の資金を調達しましょう。
資金調達の目的によって、返済期間や利息が異なります。
長期であれば、短期に比べて利息が高くなるものの、返済期間には余裕を持っておくべきです。
一方の短期であれば、返済期間が短くて利息の低い資金調達先から融資を受けるようにしましょう。
また、必要以上の資金を調達してしまうと、余計な利息を払わなければならないため、事前に必要な資金額を概算しておくのもポイントです。

自社に合った資金調達方法を選ぶ

資金調達方法によって申請から資金調達までの期間が異なるため、自社で展開するビジネスの種類によって資金調達方法を使い分ける必要があります。
資金用途の決定から資金利用までの期間が短いビジネスには、迅速な資金調達が可能なノンバンク・ファクタリングなどの利用が向いています。
なお、資金調達が迅速な方法ほど手数料や利息が高くなるため、資金利用までの期間に余裕がある場合は、銀行融資・日本政策金融公庫・制度融資などがおすすめです。
他にも、経済産業省による補助金や厚生労働省による助成金は返済不要のため、条件を満たす公募があれば積極的に応募しましょう。

事業計画書を作成し信頼を得る

売上見込みや返済計画などを記載した事業計画書を資金調達先に提出すれば、返済能力があることを伝えやすくなります。
住信SBIネット銀行のHP にも、決算申告書がなくて過去の業績を証明しづらい場合、事業計画書があれば審査を進められることが記載されています。
事業計画書を作成する際は、説得力を持たせるために、根拠となる情報に基づいた予測データを盛り込みましょう。
事業計画書の作成方法が分からない場合、日本政策金融公庫に掲載された記述例や書式の利用や、事業計画書作成代行センターに任せることで、スムーズに資金調達できます。

専門家に相談する

資金調達をした経験がなくて不安を感じる場合は、専門家に相談するのも失敗を避ける方法の1つです。
専門家としては、中小企業庁の審査によって認定された経営革新等支援機関が挙げられます。
経営革新等支援機関は、中小企業に対して専門性の高い支援の実施を目的としており、信頼性の高い機関です。
経営革新等支援機関に相談することで、経営状況の分析・事業計画の作成・事業計画の支援など幅広いサポートを受けられます。
資金調達方法は様々で、資金調達に失敗すると経営状況の悪化に直結してしまうため、まずは経営革新等支援機関に相談することをおすすめします。

継続的に利用して取引実績を作る

資金調達後も、資金調達先との関係性を保って取引実績を作るのがポイントです。
定期的な進捗状況の報告によって、資金調達先から信頼してもらえば、次回以降の融資でも寄り添ってくれる可能性が高くなります。
実際に金融庁の平成28年度の企業ヒアリング・アンケート調査 によると、メインバンクに相談した企業の約8割が、財務に関して有益な結果を得られたことが分かっています。
現状だけでなく将来の経営状況まで見据えた資金調達を実践することで、企業としての発展が期待できるでしょう。

まとめ

中小企業が資金調達方法を検討する際に重要になるのは、資金調達の目的を明確にすることです。
資金調達の目的が明確になると、「借入」と「返済」の具体的な要件が決まります。
借入はいくらをいつまでに借りて、返済はいくらをいつまでに返していくか、という「幾ら」を「いつまでに」が分からないと資金調達方法が決められません。
資金調達が実現するまでが短いが少額しか調達できない方法や、逆に時間は長くかかるものの高額の資金調達ができる方法もあります。
自社の状況に応じた適切な資金調達方法を選択し、事業拡大や資金繰り改善に役立ててください。

【PRIME】

【STANDARD】

【GLOWTH】





オンファクト